加藤曙見書作展
イノセント - 宮沢賢治を書く -

会期:2004年11月20日(土)-24日(水)
開場:11:00-18:00(最終日は16時まで)
会場:毎日アート出版1階画廊
入場無料
会場で今回の作品集の発売を予定しています。

 当画廊では6度目となる加藤曙見さんの書作展です。毎回ポエトリーリーディングのように詩人の言葉を書に託して発表してきました。加藤さんの書にはなぜか心のなかの聴覚に訴える響きがあります。それがどうしてなのか、寄せられた加藤さんの文章を読んで合点がいきました。
 もうひとつ気になることがあります。加藤さんをご存知でない方にこっそり教えますが、とても麗しい女性です。どうして男の詩人の作品ばかりなのでしょう。(Y)

イノセント                                      加藤曙見
 
今年も作品展ができ、本を作ることができた。それが今の私には何よりもうれしい。人に見てもらえるようなものではないのかもしれない。私は私のために書いている。自分の物語を書いている。それは私には心ときめく物語だ。
 人は何で生きるのか、人はパンのみにて生きるにあらずと言われる。パンは必要。しかしパンだけでは生きられない。パンが体を満たすものなら、心を満たすものがあって人として生きられる。そして、人によっては、心を満たすもののほうが大事なこともある。心を満たすものは目に見えない、形もない。それは人は言葉にしようとし、目に見える形にしようとしてきた。
 宮沢賢治も、彼の心を満たすものを言葉という形にした。または、言葉によって心を満たそうとした。
 私は言葉を書という形にしたくて書いている。自分の書を書こうとした最初の頃は、詩の内容を書で表現したかった。そのうち、詩の説明ではつまらない、書作品それ自体が語りかけてくるものを書きたい、と考えるようになってきた。
 現実の世界は複雑だ。生きていくためにしなければならないことがたくさんある。それは本当に必要なことなのだろうか。生きていくのはもっと単純なのではないだろうか。余計なものは捨てたい。
 宮沢賢治は、人間にとって大事なものを求め、不純物を捨てて捨てて言葉の結晶にしたように感じた。その結晶の美しさは、作品を生み出した彼の無邪気とも見える純真さなのではないかと、作品展のタイトルをイノセントとした。
 しかし、宮沢賢治を書いているが、あつかましいことにこれはイノセントを探す私の物語。探しあてたかって?尻尾はつかんだような気がするが、夢物語かもしれない。
二〇〇四年十一月

加藤曙見(かとうあけみ)
福井県福井市生まれ。昭和53年より書を始め、58年に千葉の書家、木村三山に出会う。会に属さず自由に活動する木村の姿に感銘を受ける。63年に木村が逝去した後、漢詩、歌、誌などをテーマに初個展を開く。以後、年一回福井市内で個展。平成6年からは長崎市島原市の復興イベントの一環で「春爛漫」展に出品。また、東京などの画廊で個展や現代歌人、詩人達とのコラボレーションでも作品を発表していく。

略歴
昭和53年 書道会に所属。当初より自由に書きたいと考えていた。
  58年 千葉の書家、木村三山に出会う。木村の主宰する現代書詩創風会に入会。
  63年 木村三山逝去。初個展「加藤曙見書作展」開催。
平成 元年 福井市内で個展開催(以後9年まで毎年)
   6年 「春爛漫」展(長崎県島原市)出品。(以後毎年)
   9年 個展「萩原朔太郎を書く」(12月、東京神田・毎日アート出版画廊)
  10年 共同展「フォーシーズンズ」(9月、伊豆下田・ギャラリー田)
  11年 個展「女色夢幻」(7月、東京神田・毎日アート出版画廊)
  12年 個展「五月の鷹−寺山修司の作品より」(11月、東京神田・毎日アート出版画廊)
  13年 個展「私の上に降る雪−中原中也を書く−」(11月、東京神田・毎日アート出版画廊)
  14年 個展「私の上に降る雪」(6月、福井市・ギャラリーサライ)
      個展「山頭火行乞記より」(11月、東京神田・毎日アート出版画廊)
      小企画展「私の上に降る雪」(11月、山口市・中原中也記念館)
  15年 個展「あんずよ燃えよ−室生犀星詩より−」(9月、金沢弥生郵便局、11月、東京神田・毎日アート出版画廊)
  16
年 個展「イノセント -宮沢賢治を書く-」(9月、金沢弥生郵便局、11月、東京神田・毎日アート出版画廊)

作品集:「私の上に降る雪−中原中也を書く−」(発行:ジャパンビルド)
    「山頭火行乞記より」(発行:ジャパンビルド)
「あんずよ燃えよ -室生犀星詩より-」(発行:ジャパンビルド)

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